【文科省解体? 認定こども園化?】『こども庁』は誰のために創設されるのか
第74回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-
■「こども庁」が「認定こども園」化する可能性
13日の会合では出席者から『幼稚園と保育園の綱引き、文科省と厚労省の争いという事態に至ってはいけない』との意見が出たと『日本経済新聞』(4月13日付電子版)は伝えている。その記事は、『福井照事務総長は会合後、記者団に幼保一元化を議題にする考えを示した』とも報じている。
幼稚園を管轄する文科省と保育園を管轄する厚労省との争いは避けるべきだとの意見がある一方で、争いになっても幼保一元化を検討していく、というのだ。
幼保一元化が簡単にいかないことは「認定こども園」が登場してくる経緯の中でもはっきりしている。
認定こども園について内閣府のホームページは、『教育・保育を一体的に行う施設で、いわば幼稚園と保育所の両方の良さを併せ持っている施設です』と説明している。幼稚園と保育所(保育園)の両方の良さを併せ持つのなら全部が認定こども園でいいはずだが、幼稚園と保育園は継続して存在している。
その管轄は、文科省でも厚労省でもなく内閣府となっている。就学前の子どもたちを対象にする施設が3種類あり、それぞれを管轄する役所も違うのだ。
認定こども園がスタートしたのは2006年10月だが、プランとして登場するのは2003年6月のことで、「聖域なき構造改革」を掲げる当時の小泉純一郎首相のもとで閣議決定された「骨太の方針」に盛り込まれていた。
そこには、『就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設の設置を可能とする』という一文がある。幼保一元化を実現した、幼稚園でも保育園でもない施設として考えられていたことになる。それが、新しい施設がつくられるのではなく、従来の幼稚園や保育園をこども園として「認定」するという中途半端な形になっていく。
そうなってしまったのは、文科省と厚労省の「縄張り争い」が原因だ。幼稚園や保育園も残った。認定こども園の管轄は内閣府ということになってはいるものの、内閣府は「文科省や厚労省との提携」を強調してもいる。文科省と厚労省の言い分を尊重する姿勢で、両省の縄張りをできるだけ侵さないようにしているともいえる。
こども庁となると、管轄どころでは済まなくなる。権限も、そして人さえもこども庁に引き渡すとことになってしまうからだ。文科省や厚労省にしてみれば、縄張りだけでなく組織さえも失う事態を覚悟しなければならない。
さらに4月13日付で共同通信は「政府内で検討されている3案が13日、関係者への取材で判明した」として、「3案のうちの一つは、こども庁を独立した組織として内閣府に新設する。『就学前から義務教育段階まで一貫して一体的に推進する』としており、文科省から自治体への指導権限も移管する」と伝えている。こうなると、文科省解体でしかない。
これに文科省が黙っているわけがない。もちろん厚労省にしても同じである。認定こども園のとき以上に、全力で抵抗するはずだ。それが容易に予想されるからこそ、13日の自民党会合でも心配する声が上がったことになる。
そして4月14日付の『読売新聞』(電子版)は、こども庁の設置法案を来年の通常国会に提出する方向で政府・与党が調整に入ったと報じているが、その記事では「幼稚園と保育園の一元化は見送る公算が大きい」とも伝えている。すでに尻すぼみになってしまっている印象である。
はたして、こども庁を創設する意味があるのだろうか。またもや認定こども園のような中途半端なものになってしまうのか。それとも、菅首相が子どものことを考えている姿勢をアピールするだけのアドバルーンで終わってしまうのだろうか。
いま必要なのは「やった振り」のポーズではない。不登校の問題、教員定数の問題、非正規教員の問題など早急に取り組まなければならない具体的な問題が山積みになっている。そのひとつひとつに具体策を講じていくことが求められているはずだ。
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